家事塾のこども版。お手伝い塾って知ってる?

「もっとお手伝いしてほしい」--誰もが一度は思ったことがあるに違いない、子どものお手伝いの悩み。「自分のことは自分でできるようになってほしい」「手伝ってくれたら助かる」--様々な思いがありますが、簡単に子供を動かすことができれば苦労はしません。では、どんなアプローチが良いのでしょうか。

実は「お手伝い」は単に家事の戦力になるというだけでなく、子ども自身の心に大きな影響を与えるもの。子どもと親の在り方にまで発展する深いテーマなのです。

大阪府池田市で「お手伝い塾」を開く、家事塾認定1級家事セラピストの吉田尚子さんにその気になる内容を伺いました

「家事塾」「お手伝い塾」って何?

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毎日何となく必要に迫られてやっている家事。そんな「家事」に価値を見出し、「家のコトは生きるコト」というメッセージを発信している「家事塾」

ライフスタイルや家族構成が違えば、1人1人の家事のあり方は違うはず。養成講座で学んだ家事セラピストが、家事の悩みに答えたり、講座を実施しています。代表は『「捨てる!」技術』で知られる辰巳渚さん。

「家事塾」の理念の1つに、蓄積された家事の技術や知識を「次の世代に渡す」というものがあります。「お手伝い塾」は、まさにこれを体現したもの。幼稚園児から小学生を対象に各地の家事セラピストによって実施されています。

「お手伝い塾」で何をするの?

その1。親子で「家のコト」を考える

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子どもの本音、聞いてみたことありますか?最初から「この子はお手伝いを嫌がっている」と決めつけていませんか?

お手伝い塾ではまず、子どもの本音を聞いてみるところからスタート。「お手伝いのいいところ、いやなところ」を付箋に書いたり、参加者みんなで話しながら、どう感じているのか聞き合います。

その2。体を動かして、感じてみる

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小さい子からできるお手伝いの1つが掃除。はたき、ほうき、ぞうきんを使って実習を行います。子どもは体を動かすことが大好き。そして、家事は身体を動かすこと!親子でやるともっと楽しいことに気付きます。

そこのお母さん、スマホをいじりながら「お箸を食卓に並べて~」とか言ってませんか?あ、それ、私でした…。親子で一緒に作業をすることで、「相手に仕事をさせる」という親の意識も、「させられる」という子どもの気持ちも変わります。

その3。行動計画を立てる

さぁ、おうちに帰ってからが勝負!そのための行動計画を立てます。何曜日に誰が何をするのか--家族で相談して決めていきます。その過程で、気づくのが「毎日の生活の中で、誰が何をするか、役割が決まっていると家族がとても助かる」ということ。自分がしたいときにするだけではなく、誰かのためにする、ということですね。

講座を通じて、下心でいっぱいだった母の気持ちもきっと大きく変わるはずです。…すみません、私だけですね。

子どもたちはこんな風に変わる!

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我が子と一緒にお手伝い塾に行ってみたい気持ちは高まったのですが、さて、ちゃんと参加してくれるのかが不安です。

「初めは親に連れてこられて恥ずかしそうにしていた子も、互いに質問し合う中で、普段の生活と自分のことを話し始めます」と吉田さん。子ども同士で話を聞き合うと、さらに話が盛り上がっていくのだとか。

確かに、同じ立場の者同士、お手伝いをテーマに話す機会なんてめったにありませんよね。子どもたちは互いに聞いたり聞かれたりして自分の言葉で説明していくうちに、自分が「お手伝い」に対してどんなことを感じているかに気付いていきます。

その後、実習へと進むと「自分でできる」→「身体を使うって楽しい」→「喜んでもらえる」と実感でき、さらに「家族」としての役割も意識するようになる…ことも。誰もがここまでスムーズにいくわけではないかもしれませんが、親も子も、自分の中にある「お手伝い」の概念をがらりと変える体験になりそう。

親も子も感じる新たな気付き

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お手伝い塾での終着点は『子どもはお手伝いがいやではないのだ。むしろやりたいのだ』ということで、これを親が目の当たりにできるところがお手伝い塾のいいところ」と吉田さん。

なるほど、そう子どもが思えれば、そして親もそう感じることができれば、こんなに幸せなことはありません。

「『うちの子は違うだろう』と思っている親も、子どもの嬉しそうな様子を見ることで、意外な発見をします。そして、子どもがいやなのはお手伝いそのものではなく、そこに関わる親のリアクションであるということも明らかになります

…ドキッ……。図星すぎて言葉がありません…。

参加者の感想を読んでみると…

最後に吉田さんがある参加者の感想を教えてくれました。

お手伝い力=自分で生活する力(身の回りのことをできる力)と考えていましたが、「体を使う」や「人の役に立つ(頼り頼られ)」力があることに初めて気づかされた。

子どもの変化を目の前で見た親だからこそ言える、実感のこもった言葉です。

「親として『お手伝いが何の役に立つのか、なぜいいのか』をわかっておくと、毎日の暮らしの中のブレが少なくなる」と教えてくれた吉田さん。頭では分かっていても、口で言うだけでは子どもたちの心には響かない--だからこそ「お手伝い塾」に一緒に参加することがきっかけになるのかもしれません。

ちなみに吉田さんは、元学習塾勤務。数多くの親子に会う中で「子どもの自立のキーは親」ということを感じていて、そのことが、「お手伝い塾」での活動の根底にあるそうです。

まずは親が一歩を踏み出すためにも、お子さんを誘って参加してみてはいかがでしょう。

【親子のためのお手伝い塾@池田~おうちで育む自立力~】
〇塾ーわじゅくー(大阪府池田市菅原町9-10)で月1回程度活動中です。

※「お手伝い塾」は全国で開催されています