九州の特急5線。家族旅行で子どもと楽しもう!

特急王国と言えば九州!これ、鉄道好きにとっては常識です。

2011年に九州新幹線が全線開通する前まで、九州内の移動を担っていたのが特急電車。単なる移動手段としてだけではなく、その土地の魅力を感じさせる「旅するエンターテインメント施設」のような特急が多いのが魅力です。

あなたのおうちに“子鉄”がいるなら--次のお休みは九州にでかけませんか?特急に乗るためだけに九州旅行をしても、きっと満足できるはずです。

鉄道マニアの子どもに付き合っているうちに、鉄女になってしまった著者が、子どもと乗りたい九州の特急を厳選してご紹介いたします!

1.子ども連れなら間違いなく「あそぼーい!」

「降りたくない」と子どもが言う確率100%!?熊本・宮地間の約1時間半の行程では、とてもその魅力を味わいつくせない「特急 あそぼーい!」。

まず、度肝を抜かれるのが木のボールプール。「ここはキッズルームですか?」と思いながら進むと、子ども用の図書室、幼児用の小さなイス(しかも、大人1人の料金で隣に座れる)、ごろごろできる和室(大人はやめてね)、キャラクター犬「クロちゃん」グッズやイラスト、子ども用に低めに設置された販売スペースがずらずら現れて、圧倒されます。

雄大な阿蘇の自然を車中からでも満喫できるように、広い窓に面したベンチがあるラウンジ、進行方向前部に設けられたパノラマシートなど大人もその魅力の虜になるはず。車内をうろうろして自分の席に戻ると、カラフルな座席がこれまた素敵。

阿蘇の観光をやめて、そのまま乗って戻ろうかと思うぐらいです!

2.かっこ良さにくぎづけ「ソニック」

「鉄ちゃん」でもある小学生の息子に、「特急で一番好きなのは?」と質問してみると、瞬時に「ソニック」と答えが返ってきました。理由は「かっこいいから」。

単純かもしれませんが、確かに「ソニック」を好きになるきっかけは外見のかっこ良さという人が多いはず。「ソニック(=音速)」という名前もかっこいいですよね。

「ソニック」は、博多駅を出発し、大分県へと向かいます。福岡県内でも乗る人の多い「博多」「小倉」間を運行しているため、通勤や通学に、交通手段の1つとして使われています。日常的にあの空間を楽しめる人が本当に羨ましい…。

「ソニック」には「白いソニック」と「青いソニック」の2種類があります。

【運行ルート】博多~大分、博多~佐伯、博多~柳ヶ浦

白いソニック

「白いソニック」は車体前面が新幹線の様に少し出ていて、丸みを帯びた流れるようなライン。日豊本線では「白いソニック」、長崎本線では「白いかもめ」として運行しています。

真っ白な車体にブルーのラインが涼しげな「爽やか系イケメン」。外観で子どもが大喜びするとしたら、乗って感動するのは大人の方かも。

なんと、普通車のシートが革張り!高級感あふれるつくりです。頭までカバーしてくれるハイバックシートなので、安心して体を委ねられますよ。

青いソニック

「青いソニック」の正式名称は「ソニック 883系」。ゴツゴツとした形、海をイメージしたというブルーメタリックの外観。

「武骨系イケメン」とでもいいましょうか。近未来を感じさせるようなメタリックな乗降口、自由席は雰囲気が変わり木製床。

運転台を望むパノラマキャビンは、子どもにはたまりません!

3.あっと驚く仕掛けがいっぱい「特急 指宿のたまて箱」

「いぶたま」の愛称で知られる「特急 指宿のたまて箱」。子どもをワクワクさせるエッセンスが詰まった、大人気の特急です。

ホームに到着すると同時に、列車からなにやら不思議な煙がプシュ~。故障ではありません。「たまて箱」を開いた時の煙をイメージしてミストを出すという遊び心。こんなの、よく考えたら移動手段としての電車には必要のないものなんですが--「たまて箱」というネーミングを裏切らない仕掛けのひとつでお出迎え、というわけです。

鹿児島から指宿の海沿いを通るだけあって、窓の外には絶景が広がります。その大自然と調和するように、南九州産の杉材や、ヨットなどに使われるヨーク材を車内に使っているのも、大人にはたまりません。本棚のあるソファ席、背の低いキッズチェア、海側を望めるカウンター席は、回転椅子…。いつもは大騒ぎの子どもたちも、「座ろう」という気に、きっと…いや、絶対になります。

外観が白と黒で真っ二つに分かれてペイントされているのも、とてもユニーク。一度見たら忘れられないですね。

【運行ルート】鹿児島中央~指宿

4.ハイデッカーが魅力「特急 ゆふいんの森」

温泉で有名な観光地「由布院」に博多駅から向かう特急電車「特急 ゆふいんの森」。深い緑のボディカラーに包まれた外観、木を基調にした車内、アースカラーで彩られたシートなど、自然と調和した落ち着いた雰囲気は「大人の観光列車」といった感じ。

子ども向けではないのでは?と思いがちですが、意外なことに子どもにもウケています。理由は「ハイデッカーだから」「フロント部分がかっこいい」「なんかシブい」など…。列車の素晴らしさを感じるのに、年齢は関係ないのです!

到着までの道程に観光スポットがあれば、車両の速度を少し落としてアナウンスで説明してくれるのも特徴。

目的地・由布院は温泉だけでなくオシャレなカフェや美術館が立ち並ぶことでも知られますが、列車に乗った瞬間からそうしたセンスの良さに身を置ける感じがします。終着駅は別府駅。

※ハイデッカーとは、客室の床が通常より高くなっている状態の事。「特急 ゆふいんの森」では運転席の上に客席があります。

【運行ルート】博多~由布院、博多~別府

5.やっぱりSLに乗りたい!「SL人吉」

もくもくと煙を吐き出しながら走るSLは、いつの時代も子どもたちの憧れ。走るSLに乗ることができる路線は少なく、それもあって全国的な人気を集めているのが「SL人吉」です。

SLは古くから活用されているものですが、座席は木がふんだんに使われたモダンなデザイン。球磨川沿いを通るルートは眺めも最高!展望デッキでくつろぐもよし、ビュッフェで軽く食事をとるもよし…。模型のSLが飾られたSLライブラリーが車両の途中にさりげなく現れたり、SL文庫で読書ができたりと、子どもたちが飽きない工夫も満載です。

人吉駅では、転車台の見学も可能。記念撮影用に子ども用の制服を貸してくれたり、駅に停車中は機関士の話を聞くことができたりと、子どものテンションがMAXになるサービスも!

【運行ルート】熊本~人吉

九州の鉄道を語るのに欠かせない存在…

JR九州の特急と言えば--水戸岡鋭治(みとおかえいじ)さん。「その名を知らずして、鉄道好きを語ることなかれ」というほどの存在です。ユニークなアイデアと惚れ惚れするような車両のデザインを手掛ける工業デザイナーで、名前を聞いただけで乗りたくなるという人も多いはず(鉄道好きに限る?)。

JR九州だけでなく、最近ではしなの鉄道や岡山電気軌道、和歌山電鉄ほか、全国の鉄道でデザインが採用されています。今回紹介した列車はすべて、水戸岡さんが手がけたもの。

上にあげた列車に乗って、その魅力にはまったら--ぜひ今度は、水戸岡さんの手掛けた別の電車にも乗ってみてください。

ちなみに、大人向けなのでご紹介しませんでしたが、著者は「特急 A列車で行こう」や「特急 はやとの風」が大好きです!