【今日の読み物】母娘で富士山を山梨県側から眺める旅に出た話

こんにちは。イラストレーターひらたともみです。

「アクティヴ」という言葉を知ったのは、30代のとき。「ブ」じゃなくて「ヴ」。下唇を軽く噛んで「ヴ」だ。

子どもができて多少はアクティヴになったものの、三子が娘という幸運に恵まれ、「インドアサイコー!」と叫んではゴロゴロする休日。

そんなとき、ふと思った。

「私…富士山、あんまり見たことない」…と。

正確に言えば、もちろん見たことはあるのだが、それはたぶん、すごく天気のいい日に、どこぞやのなんとかタワーから偶然見えた程度の富士山。

もう少し具体的に見たのは、伊豆とか、熱海とか、とにかく静岡県に行ったときに「あ、富士山だ!」っていう程度。

そして、いろいろ思い出しながらもう一つ重大なことに気づいた。

「山梨県側からの富士山を見たことがない…!」と。

思えばかつてNHK朝の連ドラ「花子とアン」で、ハナの父、周造は「山梨の富士山が表。静岡が裏」と言っていたではないか!(実際には富士山に表裏はないそう)

 

とにかく富士山を山梨県側から拝みたい一心で、娘イロハと今回は車で行くことに!

高速道路で目視できた富士山に大興奮!

その日は東京にひとつ取材があり、そのあと山梨県に向かうことに。

連休の晴天とあり、渋滞にビクビクしながらのスタートだったが、想定外にスムーズでうれしい。

車内でウトウトしていた娘イロハ。

「このまま静かに寝せておこう」と心の中で誓った直後に、山間からひょっこりと顔を出す富士山を見つけてしまい、思わず大声を張り上げる!

「イロちゃん!やばい…!やばいよ、富士山見えたよ!やばいって…!」と、出川かよ!って自分に突っ込みを入れるほど気分が上がった。

そしてパチッ!と起き上がった娘と一緒に車の中で歓喜。そして拍手喝采。

ホント、我ながらふざけた母娘だと思う。

フォトジェニックなスポットを求めて 天然記念物「忍野八海(おしのはっかい)」

「富士山、富士山!」と騒いではいるが、決して登ろうとしない母娘の旅…。

できるだけ近くで拝みたいが、あまり近すぎると「登山道」…。

どうせなら富士山全体を、美しくフォトジェニックなスポットで拝みたい。

そんなわがままをネットで検索したら、「忍野八海(おしのはっかい)」のワードがヒットした。

さっそく行ってみると、駐車場には数台の大型バスがあり、観光地としても有名らしい。

茅葺屋根の建物に富士山が水源となる美しい八つの池。

池には色とりどりの鯉が泳いでいるのだが、池の水を覗くと自分の顔が映るほど水が澄んでいて、ビックリ!

あちこちで、富士山をバックに写真を撮る人が大勢いる中、イロハは無言で「富士山の水で作ったかき氷」をずっと食べていた。あまりにも「おいしい、おいしい!」と言うので、どれどれ一口…と拝借したら、自分史上最高においしいかき氷!

水って大事だな~、この水でご飯炊いたらおいしいんだろうな~と、思ったが、「富士山のおいしいお水」が近所のスーパーで売ってる気がして、買わずに通り過ぎてしまった。

平成25年に世界遺産に登録された富士山世界文化遺産構成資産のひとつが、忍野八海。連休とあってか、外国人旅行者がとても多く、あちこちで写真を撮る人でいっぱいだったが、なんとかいい写真も撮れて大満足。

「ずっとかき氷」の娘イロハは、食後に土産屋でひたすら祖父へのお土産を吟味していた。

選んだのは信玄餅でも葡萄酒でもなく、鹿の皮で作る甲州印伝の財布。なんでも山梨独特の革工芸製品なのだそうで、多くの外国人が手に取っていた。

富士山の素晴らしさを言葉で伝えるのは難しい。

そこの芽吹く息遣いのような荒々しさと気高さに背筋が伸びるような感覚。そうかと思えば、母性のような柔軟さと包容力も感じる。どこから見ても、富士山は雄大でエネルギッシュだ。

この歳になってもいまだに「一生のお願い」を年に数回している私だが、その願いや祈りは、全部富士山が吸収してくれているんじゃないかと思ったほどに、存在そのものが日本の象徴のひとつだと改めて思った。

「やっぱり日本っていいなー!」と、全力で感じたのは事実なので、私の中で「クヨクヨしたら富士山を拝め」がマイルールになったことを報告したい。

ひらたともみ

2007年、30代でフリーのイラストレーターになる。
横に大きめ夫+息子2人+娘1人の5人家族。
20代、30代、40代で出産を経験し、自ら偉人を名乗っている。
趣味はハイボールを飲みながら読書or映画。俳優の窪田正孝をこよなく愛している。
No Smoking. 栃木県宇都宮市在住。